【小説】クライアントは”お豆”となる|加賀美レイナに堕ちた童貞マゾの回顧録04

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【1】-退屈-

「急な仕事が入ったの。悪いけど、今週の仕事は全部キャンセルして貰える?多分、1週間くらいかかると思うわ。」

彼女から連絡が入ったのは、僕が彼女の前で自慰行為をした翌日のことだった。
洋服を着た彼女の前で、自分だけが裸になって自慰行為を行う。

それは、世の中のほとんどの男性にとって屈辱的で、避けがたい状況であるはずだ。
しかし、僕のペニスはこれ以上ないほどに勃起し、激しい射精をしてしまったのだ。

ほとばしるような快楽が、僕の体を駆け巡るのを感じた。
彼女が目の前にいるだけで、これほどまでに違うものなのかと思うほどの快感だった。
ただ、その快感の途中からの記憶が曖昧だ。

どういう状況で、どこに向かって射精したのか具体的なことが思い出せない。
射精後に、彼女とどのようなやりとりをしたのかも覚えていない。
もちろんその後、どのようにして家に戻ってきたのかも…。
歩いて帰ったのか、それともタクシーを使ったのだろうか。
気がつけば僕は自宅のベッドに横たわっていて、いつもと同じ朝を迎えていたのだ。

もし、前日に起こったことが全て夢だったと誰かに言われても、僕は何ら効果的な反論はできなかっただろう。
時計に目をやると、午前10時を少し過ぎていた。
その日は、夕方から彼女の仕事が入っているだけだった。
唯一の仕事がなくなったので、僕の予定は何もなくなったことになる。
大学の授業も写真スタジオのアルバイトもない。
僕は日がな1日、時間を持て余す暇な大学生に戻ったわけだ。

彼女に了解した旨のメッセージを送ると、僕は改めて、その日に何をすればいいのか考えを巡らせてみた。
しかし、何も思いつかない…。
ここ数週間、暇を自認する大学生らしからぬ忙しい日々を送っていたせいで、外部から組み込まれた予定がなくなると、僕は自分で何をすればいいのか分からない人間になっていた。
以前の僕なら、もう一度布団に横たわるところだが、彼女からの連絡ですっかり目が覚めてしまっていた。

仕方なく部屋の片付けでもしようかと重い腰をあげる。
残念なことに、僕は時間があってもそれほどまめに片付けをするタイプではなかった。水回りさえ綺麗にしていれば、気にせず生活できる人間だ。
忙しかった日々の反動で、さらに散らかった部屋の様相が僕の瞳に映り込んでくる。
散乱している洗濯物を洗濯機へ放り込み、布団を干し、掃除機をかける。
部屋のあちこちに無造作に置かれた小物や、机の上にある大学の資料を分類して片付ける。

ふと気が付くと、財布や部屋の鍵を入れる小物入れに、茶色い封筒が積み上げられているのに気が付いた。
彼女から受け取った報酬の入った封筒だ。
それも1枚や2枚ではなく、まるで放置していたポストに投函された郵便物のように、分厚い束になっていた。

僕は封筒を1枚ずつ手に取り中身を確認していった。
そのほとんどは紙幣だったが、中には紙幣と硬貨の入った封筒もあった。
疲れたからとタクシーを使ったときに、無造作に封筒の紙幣を使って支払いを済ませ、そのままおつりを封筒に突っ込んでいたときのものだ。
全ての封筒を空にして、その合計を数えてみると30万円近くの金額になっていた。

恐らくは、ちょっとしたサラリーマンの1か月分の給与と同じくらいだろう。
もちろん、僕が行った労働の対価として見合っている金額だとは思わない。
ごく普通の大学生が、これだけのお金を短期間の内に手に入れるようになれば、金銭感覚が狂って散在するのかもしれないが、僕はそのお金を自分の贅沢に使う気にはなれなかった。

元来、それほど物欲があるわけではないし、お高い食事にもそれほど興味はない。
高級レストランなんて行ったことはないし、行きたいと思ったこともなかった。
何より、ドレスコードや食事のマナーについて気にすること自体が僕にとってはストレスなのだ。

「彼女はどうなのだろう」と僕は思った。

そして高そうなレストランで優雅に食事をする彼女を頭の中で想像した。
彼女なら、色んなことを知ってそうだ。
そんな彼女の姿を想像すると、僕はとても寂しい気持ちになった。

忙しい日々は何かとストレスが溜まるものだが、暇だと感じるほど時間を持て余すのも健康的ではないのかもしれない。
僕はそんなことを考えながら、札束を引き出しの中のファイルに入れて、黙々と掃除を続けた。

【2】-藤咲さん-

「よっ! 久しぶり」

翌日の午後、15時10分からの講義を受けるために、大学の講堂の隅に座っていた僕の肩に、色白の華奢な手の平がポンと置かれた。それに連鎖するようにスパイシーな香水の香りが僕の鼻腔を刺激する。

藤咲さんだ。

スキニーのデニムに白いパンプス、シンプルなシャツに淡いブルーのカーディガンを羽織っている。
ノートパソコンと決して多くない授業の資料が入ったクリアファイルを手に持ち、肩からはどこぞのハイブランド品と思われるバッグをブラ下げていた。

「おっ、珍しいね。何かあったの?」と僕は言った。

藤咲さんは僕の皮肉に一瞬だけムッとした表情をつくり出す。
そして「どう? 就職活動の進捗は」と言いながら、彼女は僕の隣に座ってきた。
「いや、全然だよ。そっちは?」と僕は言った。

藤咲さんは、ため息交じりの吐息を一度だけ吐き、頭の中で何かを考えるような仕草を見せながら、クリアファイルからノートパソコンを取り出していた。

「内定をもらった広告代理店が1社、2次面接をパスしたのが2社、あとは一応、大手メーカーも進んではいるんだけど、まぁあんまり行く気にはなれなくてね。」

藤咲さんは、まるで自分の肩書きを並べるように、就職活動の進捗状況を説明する。

「順調じゃん。少なくとも、就職できないって状況は避けられるわけだし。」
「う~ん。でもなぁんかイマイチなのよねぇ。今日も別の広告代理店の人を紹介してもらって友達と飲みに行くんだけど…。」
「それって…、就職活動なの?」
「まっ、何事もコネを使うことが重要ってことよ?」と藤咲さんは言った。

それから僕たちは、とても退屈な授業を受けた。
その授業は必須科目だったが、出席さえしていれば単位はくれることで知られる教授の授業だったこともあり、僕の頭はまるっきり上の空だった。

藤咲さんが僕の隣に自然に座り、一緒に授業を受けていることに懐かしさを感じた。
そして授業の途中から、僕はいつの間にか藤咲さんのことだけを考えていた。
大学のアイドル的存在とも言える藤咲さんと僕は、大学2年の冬が終わる頃まで“結構いい感じの関係”だった。

結構いい感じの関係というのは、正式に付き合っているわけではないけれど、単なる友達という関係でもない、ある程度親密な関係だ。

少なくとも、彼女と会話をすることすらできない男子学生が圧倒的多数を占めていた中で、大学の外でも会うことができていた僕は、幸運と言ってもいいのだろうと思う。

大学に入学してから同じクラスにいた藤咲さんは、意図せずとも目立ってしまう存在だった。モデルのようなスラリとした体型に、目鼻立ちのくっきりとした典型的な美人と言われるタイプだ。

ただ、決して愛想が良いわけではなかったので、気軽に挨拶をすることも躊躇わせる近づきがたい存在でもあった。

あれだけの美貌なのだ。

恐らく、それまでの人生で、男性からの告白やデートの誘いをたくさん受けてきたのだろう。もし、藤咲さんが愛想が良くて話しかけやすい性格だったならば、それを断るのに費やす時間も馬鹿にならなくなる。

藤咲さんにとって、他人にそっけない態度を取るということは、そういう事態を避けるための、一種の処世術のようなものなのかもしれない。

そんな彼女が、僕と会話をするようになったのは、授業の資料の貸し借りがきっかけだった。厳密には、僕が藤咲さんに何かを借りたことはなく、僕が一方的に貸す関係だったのだが、藤咲さんが頑なに「貸し借り」という言葉を使うので、僕もその言葉を使うようになった。

どうして藤咲さんが同じクラスの女子ではなく、僕にノートを借りようとしたのかは分からない。僕が他の男子と群れることがなく、いつも一人で授業を受けていたからなのかもしれない。

講堂の中段の隅にいつも一人で座っている大人しそうな人間がいれば、男女関係なく話しかけてみようと思うのは自然なこと……なのか?
その疑問は永久に闇の中…。

いずれにしても、授業を欠席することが多い藤咲さんとは対照的に、いつも出席していた僕はがサポート役にはうってつけだったことは間違いないのだろう。

ノートを含む資料の一切合切の貸し借りをしていれば、自然と連絡先を交換するようになる。授業で配布される資料はアナログだが、授業中に自分で取るメモはパソコンを使うことがほとんどだ。

それを渡すのにわざわざ日時を決めて会う必要なんてない。
月末に小テストがあるとか、ちょっとした連絡をするのはLineの方が適している。

1つの授業でその関係が成立すると、当然のことながら他の授業にもその影響は及ぶ。そういう流れで、僕と藤咲さんは連絡をする機会が増えていった。
そんな味気ない関係を変えるきっかけを作ったのは、意外にも藤咲さんの方だった。

「ねぇ、来週あたり空いてる日…ある? いつもお世話になってるからお礼したいんだけど。」と藤咲さんは言った。
そうして僕らは食事をしたり、授業の終わりに遊びに行くようになった。
テストが終わり長期休みに入ると、わざわざ時間を調整して会うこともあった。
それをデートと言っていいのかは分からないが、僕はデートだと思っている。
僕も藤咲さんも、お互いの好意について話すことはなかった。

でも僕は藤咲さんのことが気になっていたし、少なからず藤咲さんも僕に好意を持ってくれている。
そんな気がしていた。
そして、3回目のデートでレンタカーを借りて湘南の海に行ったとき、僕は生まれて初めてキスをしたのだ。

しかし、藤咲さんとの関係がそれ以上深まることはなかった。
空いた日にデートをすることはあっても、その先…つまりはキスよりも深い肉体の絡みを僕達が持つことはなかった。

今にして思えば、僕がもっと積極的になるべきだったのか…と思うこともある。
そうすれば僕は、極めて普通の純粋な体験をすることになったのかもしれない。
普通の大学生が恋をしてその相手と行う、猛々しくはあれどぎこちない初めての性行為を経験することができたのかもしれない。

でも僕はそのチャンスをみすみす逃してしまった。
ただそれも何かの導きだったのだ。
僕が未熟な男で居続けるための…
僕が童貞のままでいることの…

大学3年にあがる頃、僕と藤咲さんの距離は決定的に離れていってしまった。
就職に影響するゼミの選択に熟考する藤咲さんと、訪れる将来に無頓着な僕の話が噛み合うはずはなく、資料を貸し借りするだけの関係に戻ってっしまったのだ。

そして僕は結局、ゼミというものに入らなかった。
つまり、就職活動をするときに、自分が大学で何をやってきたのかアピールする武器を手放したことを意味する。

そうして僕は、代わりとなる武器を手に入れるために奔走することもなく、大学の単位を無難に取りつつも、カメラマンのアルバイトに精を出すようになっていったのだ。

「それじゃぁ、またね」
そう言って藤咲さんは、駅の方角へと歩いていった。

僕は、彼女の後ろ姿を視界から外すことなく、大学のエントランス前に立ち尽くしてしばらく見送っていた。
その後ろ姿を見て、僕ははっきりと悟った。
僕はもう、藤咲さんに魅力を感じていないようだ…と。

【3】-再会-

「久しぶりね」

それが彼女から僕に向けて放たれた最初の言葉だった。

その言葉は、彼女自身がそう思っているわけではなく、僕の心情を見透かした上で、敢えてその言葉を選んで発したような独特の響きを持っていた。

不思議な気分だ。
たかだか1週間程度顔を合わせることがなかっただけなのに、久しぶりとは…。

しかし、彼女の言葉は僕の心に違和感を残すことなくじんわりと馴染む。
そして「あぁ、僕は結局、彼女にものすごく会いたかったんだな…」と改めて思う。
仕事を中断するという連絡を受けてから、正確には11日が経過していた。

彼女は珍しく僕よりも早く代々木のコテージに到着していて、2階のオフィスで何やら慌ただしくパソコンを操作している。

「お久しぶりです」と僕も言った。

しかしその言葉が彼女に届いたのかは分からない。
僕の声は知らない内に、ものすごく小さくなっていたかもしれないし、もしかすると震えてさえいたかもしれない。

それだけ長い時間に感じたのだ。
その間僕は、まるで長いトンネルに入り込んでしまったような感覚だった。
真っ暗なトンネルではなく、出口の光が遠くに見えているトンネルだ。
しかし、その出口の光が近づいて大きくなることはない。
視線の先に、小さな丸い光が見えるだけだ。
僕は彼女に会うまでに何回かメッセージを送った。

次の仕事はいつ頃になりそうですか…とか、この間迷惑になるようなことをやらかしませんでしたか…とか、そんな意味のないメッセージだ。
それらのメッセージに既読の表示は付いたが返信が来ることはなかった。
彼女は余程忙しいのか、それとも敢えて返信をしないのか。
そもそも、こういうタイミングで連絡してくる男は嫌われるのか…。
色んな思いを巡らせながら、僕は長く退屈な時間を過ごした。

そして目安となる1週間が過ぎた頃、僕はもう彼女にはこの先ずっと会うことができないのではないかという不安に苛まれていた。

『撮影の仕事は他の人に頼むことにしたわ。学生生活…、楽しんでね』とでも言われてしまえば、彼女のいる生活は終わってしまう。忙殺されて忘れていたが、僕と彼女の関係は言葉ひとつで縁が切れてしまう程度の浅いものでしかないのだ。

この退屈な生活がずっと続いてしまうのか…という想像が頭を駆け巡る度に、僕は絶望した。「ねぇ、あまり時間がないの。ボーッとしてないで…行くわよ?」と彼女は言った。
彼女は僕に軽く微笑み、そそくさとエレベーターの方へと向かった。
「どこにですか?」と僕は言った。
「3階」と彼女は言った。

【4】-代々木のコテージ3階-

エレベーターに乗り込むと、彼女は階数を示すボタンの下にあるステンレス製の扉を開けた。小さな正方形の扉の奥には鍵穴があり、そこに鍵を差し込んで3階のボタンを押す。

「3階…ですか?」と僕は言った。
「そうよ?このエレベーターで自由に行けるのは1階と2階だけ。今まで気づかなかったの?」と彼女は言った。
「そう…ですね。気づきませんでした。」と僕は言った。
そうしてエレベーターの扉が閉まり、2人の間に沈黙が訪れた。

ゆっくりとエレベーターが動き出す。
彼女と2人きりの空間は随分と久しぶりだなと僕は思った。
狭い空間に閉じ込められているせいだろう。
彼女が身につけている甘い香りが僕の鼻腔をくすぐる。
それはとても幸せなことのように感じられた。
何はともあれ、僕はまた無事に彼女の隣に立つことができているのだから。
ただ…、2人の間に漂う空気が何かおかしい。
「…」
「…」

その違和感を感じ取った僕は「えっ!? ちょっと待って下さい。普通は気づくものなんですか?」と彼女に質問する。
彼女は吹き出すのを我慢するようにクスっと笑った。
それは張り詰めた緊張を解きほぐすような、朗らかな笑いだった。

「普通は…そうね。気づくと思うわ。でもまぁいいじゃない。それは君が無垢である証なんだから」と彼女は笑いながら言った。
彼女の笑顔が見れたことは嬉しかったが、何か釈然としない気持ちが僕の胸にこみ上げてきた。

僕は彼女から見て普通とは違うのだろうか。
仮に普通じゃないとして、その違いは社会人と学生という立場の違いから生まれているのだろうか、それとも人間性の違いなのだろうか…。

「5階とか…押してみていいっすか?」と僕は試しに言ってみた。
「ダメよ。もう到着するから」と彼女は言った。
そして彼女の発言が終わるのと同時に、エレベーターの扉が開いた。

廊下を進み扉を開けた僕の視界に飛び込んできたのは、2階とは対照的なだだっ広い空間だった。

部屋の中央に複雑な模様の入ったペルシャ絨毯らしきものが敷かれ、その上に革張りのいかにも高そうな椅子が2つ、向かい合うようにして置かれている。
印象的なのは壁に貼り付けられた大型の鏡だ。
具体的にどのくらいのサイズなのだろう。
ざっと見た限りでは、僕が横になって鏡に貼り付けにされたとしても余裕がある印象だ。
そんな部屋でやることと言えば何だろう。
面接か…それとも単純にこの部屋を使って撮影をするのだろうか。

「君はあっち」

彼女は考えを巡らせる僕の背中をツンと指でつつき、部屋の隅にある別の入口へと促す。
扉を開くと細長い通路が視界に入ってきた。
いや違う…、脇部屋だ。

メインとなる部屋の側面に沿うような形で、細長い部屋が設けられていたのだ。
「こっちの脇にある部屋は、言ってみればモニタールームよ」と彼女は言った。
「モ、モニタールーム?」と僕は声を出した。
「君は今日ここで、私の仕事を見学するの。隣の診察室でクライアントの相手をする私の仕事ぶりをね。」と彼女は続ける。

恐らく僕は、目をまん丸にして驚いていたのだろう。
彼女は僕の顔を見てクスクスと笑っている。
そしてその笑いは、僕の次の行動とそこで発見する驚きををも想定していたと思われる。

案の定、僕は2つの部屋を言ったり来たりして絶句することになった。
彼女が診察室と呼ぶ大部屋に貼り付けられた鏡はマジックミラーになっており、脇にある部屋から見えるような仕掛けが施されていたのだ。

そして彼女の発言に含まれていた診察室という言葉は何を意味しているのだろうか。
色んな思考が僕の頭を駆け巡る。
しかし彼女は待ってはくれない。

「君はここで、隣の部屋の様子をずっと観ておくの。ちょっとした食べ物と飲み物は置いておいたけど、そんなもの…必要ないわよね?お手洗いに行くなら今のうちだけど…」
「いぇ、それは大丈夫です」と僕は静かに言った。
「そぅ、じゃぁ…いい子にしててね」彼女はそう言って扉を閉めて隣の部屋へ向かった。
えぇー、と心の中で僕は思う。

そうして振り返り細長い部屋全体を見回す。
これからしばらくの間、ここで何をすればいいのだろう…と、僕は思う。
一度落ち着いて、ゆっくりと深呼吸。
改めて部屋を見渡してみると、細長い形は歪ではあるが不快な印象は微塵もない。
その上でコーヒーを置かれているのだから、僕が落ち着けない理由がない。
ローラーが付いた背もたれのない丸椅子に腰掛け、コーヒーを口に含む。
そうすると、僕の住んでいるアパートよりも居心地がいいかもしれないと思うようになった。
コーヒーが体中に染み渡るように、まぁいっか…という気持ちが僕の体を満たしていく。

そうしている内に、隣の部屋に彼女が入ってきた。
見知らぬ男を伴って…。
どうやらクライアントのようだ。

「さぁ、どうぞお座り下さい。」と、彼女はいつもより丁寧な口調で、その男を椅子に座るように促した。
そして鏡越しに僕の方を向いて、僕にニコリと微笑む。
彼女は手に持っていた黒い端末のスイッチを押す。

そうすると、今まで聞こえていた隣の部屋の会話が聞こえなくなった。
そうして僕は、目視だけで彼女と男の行為を観せられることになったのだ。

【5】-”お豆”となる-(※音声サンプルあり)

童貞マゾの回顧録04-音声パート表紙

その日は、俺が待ちわびた1日だった。
そして、転機となるはずだった。

長年の悩みから解放される日、
自分がまた一歩…成功への道を進めていく日

この日のために、コネを使って大枚はたいてありついたのだ
噂のコンサルティングに…。

しかし、女の言動はイチイチ癇に障る

「ほら…早く脱いで頂けますか?」

そう言って、女は俺のアソコを見ようとする
仕事だからと言い訳がましいが…。
ホントは俺のアソコに興味があるだけなのではあるまいか
ほら、やっぱりだ
俺のアソコを観察し始めた

「ん~」

わざとらしく唸って、顕になったアソコを入念に査定する
ゴム手袋をはめて…
3本の指で摘んで…
汚物でも扱うような仕草を見せながら…
俺の価値を査定する

言葉を織り交ぜ…か細い指で…俺のアソコを翻弄する
そうやって雑に下された判定が、納得できるものであるはずはないのだ。

決して…
決してそんなことは…。

”お豆”にされてみる(DLsite) FANZAでも楽しめます